ヒュゥ-……… 冬の冷たい風が通り過ぎる。 風があの場所特有の匂いもいっしょに運んできた。 あともう少し……かな。 そうわかっていても、特に早く歩こうとはしない。 だってそれは――― あの場所は――逃げないから。 あの場所は――どこにも行かず俺をいつでも迎えてくれるから。 .