お母さんはアタシを抱き締めると、にっこりと笑ってくれた。
愛想笑いとか、作り笑いじゃない。
間違いなくアタシが望んだ、お母さんの笑顔だった。
「莉麻は私の自慢よ…。私の娘に産まれてきてくれて、どうもありがとう」
それを言いたいのはアタシの方だ。
お母さん、アタシのお母さんで頑張ってくれてありがとう。
そうして高く振り上げられた包丁。
咄嗟にきつく目を瞑ったけど、いざとなると怖くて…
迷いと共に震えの消えたお母さんの手から、それを奪った。
本能ってもんは、残酷なものだ。
自分の身の危険を感じると、咄嗟に自分を守ろうと脳が働く。
取り上げたソレを、アタシは目の前の胸に突き立てた。
「ぐ…っ」
苦しそうな声が聞こえて、自分がしてしまった事の重さに気付く。
「あ、あぁ…アタシ……。」

