何度か見た事があるホラー映画よりも恐ろしかった。
「莉麻、ごめんね。一緒に終わりにしよう…?」
震える手で掴んだ包丁を高く振り上げた。
咄嗟に目を瞑って体を捻った。
向き合いたくなかった。
こんなお母さん、見たくなかった。
強く瞑った目をゆっくり開いた後に、“それ”は来た。
「あぁ゛…ッ!」
背中から腰に、鋭い痛みを感じた。
痛い痛い痛い
痛い痛い!!!
「莉麻…」
お母さんは何度も何度もアタシの名前を呼んだ。
でも、お母さんの目は冷たい。
「莉麻?」
お母さんがゆっくりしゃがんで、アタシに手を伸ばした。

