待って。
それすら言う事も出来なかった。
一方的に切れた電話を、かけ直しても出ない電話を
握りしめて何度も見た住所に
液晶を頼りに車を走らせた。
着いたのは古いアパート。
迷わずに部屋を見つけてインターホンも鳴らさずに入った。
信じられない光景…。
玄関から入ってすぐの部屋。
腰のあたりから、服を真っ赤に染めた女の子が
血のついた包丁を握り絞めていた。
肩を揺らして大きく呼吸をしていた。
何回それを確認しただろうか…
何時間も立ち尽くしたかもしれない。
この空間に入ってすぐの事かもしれない。
少女は倒れた。

