この1年間、何度も眺めていたアドレス帳の中に表示されてた麻子さんの住所。
うちから遠くない距離だったから、結構簡単にどこかでバッタリ会えるんじゃないか、なんて思っていた。
『いいから。ただ…この1年間、想太くんを想って頑張ってきたの。』
予想外な言葉に、咄嗟に上着を取った手を止めて、聞き入ってしまった。
『想太くんに会えて、良かったわ…今までありがとう…。』
「?!」
そんな、もう会えないみたいな言い方…
『もう終わりにする事にしたの。…ねぇ、約束覚えてる?』
「あぁ」
動揺して、ちゃんと言葉が出なかった。
聞きたい事はたくさんあるのに、言葉が出ない俺を無視して麻子さんは淡々と続けた。
『そう、よかった…もし…なら、お願いする。勝手でごめんなさい。ありがとう、本当にありがとう』
消えそうな声で、聞き取れなかった言葉も聞き返す事は出来なかった。
『じゃあ…』

