初めて連絡が来たのは、それから1年経った日の夜。

いつか来る、と信じ続けてケータイを変えないままで居てよかった…なんて。
初めて見る、液晶ディスプレイに浮かぶ『麻子さん』の文字に跳ねた心は、受話器を耳に当てた瞬間に消えた。


「もしもし?」


1年も待っていた、なんて事がばれないように、平然を装ったけどすぐに“作った俺”は壊れた。


『あぁ…想太くん…?』


明らかに様子が変だった。
受話器の向こうの麻子さんが、冷静じゃない事はすぐに分かった。


「麻子さん?どうしたの?様子が変だ…」


『もう、無理みたい…私…、』


泣き出しそうな麻子さんの顔を、想像した。
泣いたところなんて1度も見た事なかったけど、もう1年も顔を見てなかったけど、この声を聞いたら頭の中の麻子さんは容易に想像できた。


「…?麻子さん?」


『だめ、もう無理…おしまい…ごめん、ごめんね?…グスッ』



あぁ、ダメだ…電話じゃ…
俺は何もできない

やっぱり、麻子さんの力にはなれない…



「いますぐ行くから待ってて!!」