それから“俺”はベットから出て、一応2つ椅子のある食卓に麻子さんと向き合って座った。
あの日と同じ、コーヒーを作る。
麻子さんの淹れたコーヒーと同じ味を作った。
甘めのコーヒーが口に広がる。
沈黙を破ったのは俺。
「今日は、なんでベンチじゃなくて駅の近くのコンビニに来たの?」
あそこは噴水の待ち合わせ場所のベンチより、少し離れた所だ。
いつもなら雨の日も、麻子さんはそこに居たのに。
するとまた麻子さんはふふっと笑って言った。
「今日は、想太くんが見えなかった。」
…どういう事だ?
俺がその前の編集者でバイトしてる事を知ってるのか?
「噴水側の窓際の席…いつからだっけかなぁ?想太くんの事、目だけでストーカーしてたの。」
目だけって、俺だって見てたのに…?
一度も目が合った事なんて無かった…
「1回行ったの。でも今日は仕事はしてなかったから、病院の帰りにコンビニに寄っただけ」
病院?
そんな単語だけで心配になる。

