「可笑しいっていうか。あぁこの人は良い人なんだなぁ、ってすぐに分かったよ。感じた通り、良い人で安心した。でも、似合わないよ」
もうさっきまでの“女の子”の表情ではなかった。
1人の“女”の表情だ。
「……。」
何故か悔しくなった。
良い人なんかじゃない…
「“俺”は君が思ってるような人じゃないよ?」
え?と彼女が顔を向けた時を狙って、キスをした。
良い人なんかじゃない。
君が身体を売るのには、何か理由があるんだろう?
それなのに“俺”は、そんな客にまでヤキモチを妬いていた。
触れるな、と思った。
何度も考えた。
俺に君を助ける事が出来たらって…
その時初めて、今まで一切不自由に感じなかったバイトが、もどかしかった。
なぜしっかり働いてないんだ。
なぜ高校を卒業した時に、真面目に就職活動をしなかったんだ…
その上今日なんて、君に助けられてしまった。
君が居なかったらきっと、どこかの道端で倒れていたに違いない。

