麻子さんは真っ赤な傘をさして、いつものような格好ではなく部屋着姿だった。


「傘、無いんですか?」

麻子さんは心配そうに僕の顔を覗き込んだ。


「あ、いえ…ゴホッゴホゴホッ」


咳が抑えられなくて咄嗟に手で口を覆った。

麻子さんはびっくりしたように近づいて、僕の額に手を当てた。
雨と、冷たい空気に冷やされた手が気持ち良い…

「大変!すっごい熱です!」

もう意識もはっきりしなくなってきた。
相当熱が上がってそうだな、早く帰らないと…


「動かないでください!おうちどこですか?」


答えられたのか、無視してしまったのかも分からなくて…
麻子さんはタクシーを拾って僕と一緒に乗った。