「片平さんは、ただの仕事の人。」


そう、その事。
やっぱり分かってるじゃない。

アタシ、見たんだから。
メール、見たんだからね。

嘘ついたら、許さない。


だけど、想太くんが話した事に嘘はひとつも無かった。
アタシが知ってる事は。


「実は前から告白されてた。」


アタシはちまちまと手を進めながら、相槌すら打たずに黙って聞く。
いや、相槌を打つ隙さえ与えてもらえなかった。

アタシが怒鳴るのを、避けるように続ける想太くん。
その声は、全然怖くなんかなかった。

「莉麻は、お母さんが欲しい?」


想太くんは、そんな事を考えてたんだ…
告白されたのは、想太くんの問題なのに
そこでアタシの事を考えてくれてたんだ…

「アタシのお母さんは、赤澤麻子だけ。」


だけど、片平さんがお母さんなんて嫌。
想太くんの麻子さんが、アタシのお母さんだから…


「そうだよな。そう言うと思ったよ。」


少し困ったように、想太くんは笑った。
アタシは見逃さない。

どんな表情も、その変わる瞬間も。


いつでも思い出せるように…