聞かなきゃ分からないのに
アタシには自分から聞く勇気なんて無かった。
想太くんがスパゲティ用のフォークを持って、サラダの野菜を刺した。
それを確認してアタシは、かけ布団をどけてテーブルの前に座る。
想太くんの向かい側に座るだけで、緊張した。
ぱちん、と小さな音を立てて「いただきます」と小さく言う。
スパゲティフォークを手にした。
くるくるとスパゲティをフォークにからませる。
スープに浸ってるボンゴレ。
アタシが好きなものだ。
それを限界までフォークに絡ませて、口に運んだ。
アサリの風味を唐辛子の絡みが口内を刺激する。
美味しい…
手の込んだ料理に関心して、こんな時なのにアタシの鉱物を作ってくれる想太くんの事を考えて、胸が痛んだ。
どうして、こんな時まで…
「どう?」
想太くんがポツリと言った。
やっぱりアタシの方は見てくれなかった。
怒ってるのに。
こんな風にされたら、怒れなくなる。
アタシは、悪くないもん。
約束したのに、涙を拭いてくれなかった想太くんが悪いんだもん。
好きだって言ったのに、アタシに隠し事するから悪いんだもん。
ちゃんと聞いたのに…
アタシの想太くんなのに…
あんな事言うから…

