だいたい、想太くんはアタシが作ったものを「美味しい」と言わなかった事が無い。
上手く出来なかった料理も、うまいうまいと言って全部平らげてくれる。
それは、想太くんの優しさだろう。
分かっていても嬉しくなる。
そんな想太くんだから、好きになったんだと改めて思い直した。
「おかわりある？」
相当お腹が空いているのか、本当においしいのかわからないけど…
想太くんは嬉しそうに、フライパンの中の炒飯を全て食べてしまった。
ここまで美味しそうに食べてもらえれば、嘘でもお世辞でも気持ちが良い。
「ありがとうね、想太くん」
アタシは色んな意味が籠った感謝を伝えた。
「ん？変な奴だな」
想太くんは、つり目を垂れ目に変身させて笑う。
想太くんが笑うと垂れ目になる事、それがすっごく可愛い事は、アタシしか知らない。
きっとアタシしか知らない。
思わず熱くなってしまった顔を、冷めた卵スープで隠すように冷やした。
「ごちそうさま！」
アタシは急いで立ち上がって、想太くんの食器とアタシの食器をまとめながら言った。
「想太くんこの後も仕事でしょ？お腹空いたら言ってね、夕飯作るから！」
