寝起きの想太くんには珍しくない格好だけど、いつもより近づけたからか何故か緊張した。
さっきまで触れていた身体が隣にあると思うだけで、火照っていた身体がさらに熱く、赤くなるのを感じた。

こわばる身体を隠すように冷蔵庫に目をやるけど、左隣を意識しすぎてメニューの事なんて頭から吹っ飛んだ。


「んー炒飯だな」


想太くんはそんなアタシに気付かないのか、だるそうな顔を掲げて言った。
そこでようやくお昼ご飯の事を思い出す。


「…そーだね。どのくらい食べる?」


お昼ご飯に炒飯は、加賀美家の定番。
学校に持っていくお弁当さえ、炒飯ばかりだ。

「あ、たまにはピラフにしよーよ」


想太くんが作ってくれる炒飯は、お店で食べるものより美味しい。
何日食べ続けても飽きる事がない。

でもアタシが作る炒飯は、2回連続で食べれば飽きてしまう程度の普通の炒飯だ。


「ケチャップご飯でもいーけど。」


どれも似たり寄ったりなメニューだ。
レパートリーの少ないアタシの頭の中のレシピを最大限に思い浮かべる。


やっぱり単調なメニューしか浮かばない。


お腹が空いた、と言う想太くんの事も考え、すぐに出来る一度にたくさん作れるメニューと言えばそれしか思いつかない自分が情けなく感じた。