手を頭からゆっくり移動させて、優しくゆっくりと背中をさする想太くんの手が温かく感じた。 もう、想太くんの心臓の音しか聞こえない。 声は消えた。 「大丈夫、血も出てないよ。莉麻、忘れなさい」 忘れなさい…? 違うの、忘れてたの…。 血が流れる感覚だけで、痛くて痛くて立っていられない感覚。 怒りに満ちた人の顔。 悲鳴をあげながらアタシを見る人達。 その人だかりが、アタシを見る目。 パニックになった辺りの雰囲気。 アタシは誰…? 「お前は莉麻だよ」 嫌なの、アタシ。 莉麻を辞めたいの…