涙でかすむ文字を読むのには、時間がかかった。
何度擦っても、落ちてくる涙。
それを拭う事さえ、自分1人で出来ないアタシ。
想太くんが横から涙を拭いてくれなかったら、読むのにもっと時間がかかっただろう。

拭いきれなかった涙で、薄いページがふにゃふにゃになってしまった。

それをそのまま閉じて、アタシは乾いた口を開く。



「新しい感情、って…?」



芽生えてしまった…?

それにどんな意味があるのか、知りたかった。
でも想太くんはアタシに、「新しいの、開けるか」と話をはぐらかした。

時間が経って炭酸が抜けた2本のビールを持って立ち上がり、台所でそれを流し捨てると、冷えた新しいビールとウーロン茶を持って戻ってきた。

そしてテーブルの上で、グラスにリキュールとウーロン茶を入れてお酒を作った。
その後で自分のビールの缶を開けた。


アタシはそれをただ見てるだけ。

「喉乾いたろ?飲めよ」


アタシの分まで作ってくれた事にお礼も言わずに「うん」とだけ言ってグラスに口を付けた。
思っていたより乾いていた喉を潤す為に夢中で飲み込んだお酒は、テーブルの上に戻した時には半分以上減っていた。