「莉麻も泣くんだな」


想太くんの前で…というか、ここ2年。
1度も泣かなかったアタシの涙を、服の袖で拭きながら想太くんは言った。


だって泣く理由が無かった。
記憶がなかったお母さんが亡くなっても、想太くんの事を考えても

アタシが泣くのは間違ってるから。


泣きたいのは、お母さんの方だ。
想太くんの方だ。


アタシが自身の罪を咎めるたびに、泣きたくなる程悔いたけど…
そこで泣くのは、アタシじゃない

そう思ってきた。



「最後の方…にさ、莉麻の事書いてあんだ。」

そう言いながら想太くんはアタシに小説を渡した。
きっと読めって意味だろうと思い、ペラペラとページをめくった。


「その辺から。」


想太くんは終わりの方のまとめらしき文章を指差した。