想太くんがアタシを見つめても、アタシを見ていない感じがしたのは…
アタシの中のお母さんの面影を見ていたから。


昔も今も、想太くんはお母さんしか見ていない。


「お母さんが好きだったんでしょう?」


想太くんは何も言わずに、ビールの缶についた水滴が落ちるのを見ている。


「だから、お母さんを殺したアタシが憎いでしょう?」


発狂でもしてくれたら、楽なんだけど。


「殺したいくらいに。」


いっそ殺してくれたら、楽なのに…
罪を感じてる想太くんに奪われる命なら、何の未練もないんだけど。



でも想太くんはまた、意外な言葉を放った。


「いや、そんな事考えた事もなかった。」



この人はお人好し。