彼は気付いていたんだ。
それを知りながら、アタシを抱き締めてくれていたんだ。
怖くてたまらなかった。
アタシがそれを思い出すまで、彼は待っていてくれたんだと思う。
想太くん、本当は優しいから。
アタシの事、
殺したいくらい憎かったはずなのに…
いつから?というアタシの質問に、想太くんが答える気配はなかった。
「ごめんね。」
何に対してなのかも分からない言葉。
でも、ずっと言いたかった言葉。
それを言うには、あまりにも数が足りない。
もっともっと、この言葉が必要だと思った。
きっと一晩中言い続けても、まだ足りないだろう。
「それで?」
想太くんは冷たく言った。
そりゃそうだろう。
彼はアタシが憎くてたまらないだろう。
想太くんの大切な人を、アタシが殺したんだから。

