先に我慢できなかったのは想太くんだ。
想太くんはいつの間にか口から離したクッキーをお皿の上に置いてアタシにキスした。
クッキーの甘い香りで、くらくらした。
短いキスが終わって、きっとアタシは顔が赤くなっているはず。
だって、泣きそうなんだ…
「莉麻、お前それ反則。誘ってんの?」
あ…、いつもの想太くんだ。
「どしたの?イベントの日にそんな顔するなんて、珍しいじゃん」
アタシは冷静を装ってコーヒーを一口飲んだ。
そう、想太くんはイベントの日。
まるで別人のように態度が変わる。
いつもの、危険な香りがする“男の想太くん”の面影はカケラもない。
だから今日みたいにキスそするなんて、珍しいんだ。
「お前が悪いんだろ?」
違う、想太くんは…
先に我慢できなくなったって認めたくないだけ。

