ご主人様に首ったけ!

その言葉を口にするのはすごくためらわれたけど、どうしても伝えておきたかった僕の小さな願い。

露は大きな瞳をさらに大きく開き、その目は美しく輝き、揺れていたけれど返ってくる言葉は変わらない。


「これは、露が持っていて」

「え……?」

「これは、露にあげたものだ。他の誰のものでもない。
必要なければ……捨ててくれて構わないから」


露の決意がどれほどまでに強いものかを感じ、僕も決意を固める。


ただ特注服だけは……。

手元にあると、露を思い出してしまいそうだったから、露に持っていて欲しかった。

もしかしたら捨ててしまうかもしれないけれど、露に少しでも僕という存在を心にとどめておいてほしかったから。

なんて、やっぱり未練がましいかな。


その後すぐ、露は緊張の糸がほぐれたかのように泣き出してしまった。


この涙を目にしたとき、露は何か大きな決意と苦悩を抱えた上でこうして僕に別れを告げていると言う事に初めて気付いた。


悩んでいるのならば、話して欲しい。

力になれることがあるならば、なんだって力になるのに。


でも、露が何も言わず黙っているのなら無理に聞きだすことは出来はしない。

僕に出来るのは、傷ついている露の頭を撫でてあげる事だけ――。