僕の家は父がいくつもの会社を経営していて、母も兄もそんな父の手伝いをしているため毎日忙しそうにしている。


だから僕にはあまり家族と触れ合う時間がなく、使用人と過ごす事の方が多かった。

その淋しさから、僕は人と関わる事を極端に嫌い、避けるようになった。


誰も信用できなくて、使用人さえも側に置きたくなかった。

ついには日本にいることさえ嫌になり、留学と言う事を口実に日本から離れた。


海外での生活はそれなりに楽しむ事ができ、留学先の人たちともほどほどに仲良くなり、つつがなく過ごしていた。

それでも、心の空洞は埋まることなく、そのまま時は流れて帰国。


そして、帰宅してすぐに出会ったのが、露だった。


正直、新しい使用人の話を帰国前にされた時、どうでもいいと思っていた。

誰だって変わらない。
他人はみんな同じで、冷たくて信用ならないものだと思っていた。


でも――。


『はじ、めましてっ!よろしくお願いしまっす!!』


そう言った露の顔が頭から離れなくて、顔を赤らめて必死に自己紹介をする露のことをかわいいと思ったんだ。