「ただいまー!」


不自然なくらい明るい声。


だって、決めたんだもん。

もう、泣かないって――。


「あれ?露ちゃん?
どうして!?」


普通なら帰ってこないはずの私の声に驚いただろう綺ちゃんが、パタパタとスリッパを鳴らしながら玄関まで出てきた。


「えへへっ、出てきちゃった」

「え!?出てきたって!?」

「そのままの意味だよ」

「霧くんは!?」

「……別れちゃった!」


当然聞かれると分かっていた質問。

実際口にしたら、また涙が溢れそうだったけど……。


もう泣かない。

絶対に。


「別れたって、なんで……」

「ね、綺ちゃん!ご飯ある!?
早く起きたからおなかすいちゃったっ」