「ごめん、露……ごめん……っ」


震える霧様の声に、私の言葉も詰まってしまう。


でも――。

そっと霧様の胸板から手を離すと、まっすぐに霧様を見つめ、


「さようなら、霧様……」


そう小さく呟いて、霧様の部屋を出た。

隣の部屋へ駆け込み、ドアに鍵をかけると制服のままベッドに潜り込んだ。


「うっ……ぁ……っ」


独りになった瞬間、悲しさが、悔しさが一気に押し寄せ、涙が溢れ出す。


「あ……っぁあ――……っ」


枕に顔を埋めて泣き叫ぶ。


「あぁぁぁ――……っっ」


叫べば叫ぶほど、私の声と涙は枕が吸収してくれる。


でもどんなに叫んでも、この悲しみはどこにも吸収されない。


それどころか、霧様の優しさ、笑顔、全てが脳裏に浮かんで頭から離れなくなる。


霧様……。

霧様……っ。


もうどんなに思っても、この手に戻る事のない大切な彼を想い、一晩中涙が枯れるほど泣きじゃくった。