「え?今日は一緒に帰れないのですか?」

「うん。
もうすぐ夏休みだし、テストも終わったからね。先生の手伝いをする事になってしまったんだ」


それから3日後。

一日の授業を終えて、いつものように霧様がお迎えに来てくださるのを待っていると時間通りに霧様は着てくれて。


でも霧様の口から出た言葉は、いつもの『帰ろうか』ではなく、『今日は先に帰っていて』というもので……。


私が編入してから毎日一緒の登下校が日課となっている中で、霧様からそんな申し出がされたことはなかった。

もちろん私も、あの歓迎会の日以来断りを入れたことはなかったので、それが初めて別々に帰る日となった。


霧様はクラスで委員長を務めていらして、先生の事務仕事を任されることも多いとのこと。


今日は夏休みも迫ってきているため、終わらせなければならない仕事が残っているから、テストも終わったということで手伝って欲しいと頼まれたらしい。


「そう、なんですか……」


先生に頼まれたことならば、仕方がないと思っても淋しさを感じてしまう。



――霧様に近づけば近づくほど、欲が出てしまう。


誰よりも、霧様の側にいる私なのに……。


1時間でも、1分でも、長く一緒にいたいと思ってしまう。