目を開けた先にいたのは、“絶対のこの人たちには負けない”と強がりながらも心のどこかで待ち望んでいた彼――。


私の大切なご主人様……。


「霧様!」


あまりの驚きに、敬称もそのままに霧様の名前を叫ぶ。


なんで?

なんで、霧様がここに……?


それに冷静を装ってはいるけど、相当焦ってらっしゃる……?


それは表面には出ていないけど、その証拠に呼吸がわずかに乱れ、額には汗が滲んでいて、必死で私を探してくれていたという事が表されていた。


「と、東條様……」


霧様の姿を目にした先輩たちは、青ざめた顔で私から離れて霧様に道を譲った。


「露、大丈夫?」

「あ、はい……大丈夫です」


悲しそうな瞳で見つめられて、そっと左頬を撫でられる。


霧様……。

もしかしてさっきの見てらっしゃった……?


霧様には心配をおかけしたくなかったのに……。

でも私のその一言に、少しだけ安堵のため息を漏らされると私の頬に添えていた手を離し、今度は先輩たちの方へと向き直った。


「醜いね」


それは今まで聞いたこともないような低く、地を這うような声。


私が聞いたことのある霧様の声は、優しくて耳に響くような澄んだ声。


霧様がそんな声を出されるなんて……。

霧様、怒ってらっしゃるのですか……?