顧問と私たちと旅行部な時間

「す、すごい!」

 写実的な絵に感歎したのは綾海だった。
 「写真だ」と言われて見せられれば、見間違いしてしまいそうな出来映えだった。

 綾海はその仏像を、那歩の肩越しに指さした。


「これ、見たことあるわ。えっと、弥勒(みろく)菩薩だわ」


 そう言う綾海に、琴子は訂正しようと口を開こうとしたが、それより先に那歩が開口した。


「おしいわね。京都広隆寺の弥勒菩薩半伽像に良く似てるけど、これは奈良中宮寺の菩薩半伽像ね」


「その通りです」


 自分が言いたかったことを代弁してくれて、琴子は嬉しかった。
 大好きな仏像の話しをすることはおろか、自分同様に仏像に詳しい人と出会うのは初めてだった。


「それにしても、すごく素敵な微笑み」


 綾海はその絵を、恍惚とした表情で見つめた。


「菩薩半伽像は、ダ・ヴィンチの『モナリザ』、エジプトのギザの『スフィンクス』と並んで、世界三大微笑の1つなんです」


 琴子の説明に、綾海は「スフィンクスも微笑の1つなんだ」と感心した。