顧問と私たちと旅行部な時間

「ハァ……ハァ……はっ!」


 ふと我に返り、顔を起こしてみると、前のテーブルに着いていた少女――八坂那歩が自分の肩越しに、こちらをじっと見ていた。


 変な喘ぎ声をあげていた事に、琴子は顔を真っ赤にした。


 見ていた本をたたんで席を立とうとすると、那歩はトレイを持って琴子と向き合うように椅子に腰掛けた。

 綾海は何が始まるのかと、那歩がいた席に腰掛け、肩越しに二人の様子を伺った。


「まぁ、座って」


「…………」


 ――きっと変な人に思われたかも。


 琴子の周りには、非常に重い空気が漂っていた。


「あなた、もしかして姫島琴子ちゃん、よね?」


「どうして私の名を?」


「やっぱりそうだ」


 偶然の出会いに、那歩は感謝した。


 テーブルの上に畳まれた本を見た。


「仏像が好きなの?」