顧問と私たちと旅行部な時間

「運動部に答えがないのなら、文化部にならあるんじゃない?」


「旅行部ねぇ」


 思い切って旅行部に入っても良かったが、これと言った決め手がなかった。


 綾海はパッとしない顔でポテトを口に運んだ。
 そんな彼女を見て、那歩は「これは良くない兆候だ」と、何か策はないか考えた。


「みんなで素敵な旅が出来るのよ。近いところでは……日光や高尾山で歴史を学びつつ気分リフレッシュ。遠いところでは、長崎で異国情緒を満喫。きっと楽しくなると思うよ!」

「みんなで……」


 ふと、脳裏に1人の顔が浮かんだが、それが誰だかハッキリする前に消えた。


 そんな2人を、同じ制服を着た小柄の少女が横切った。


 その少女――姫島琴子は那歩の後ろの席に着くと、紙袋から『立体曼荼羅の世界』という本を出すと、テーブルに置いた。


 表紙の凛々しい帝釈天の写真に、琴子は胸が高鳴るのを感じた。


 立体曼荼羅――そもそも日本において曼荼羅とは、仏教の世界観を絵で表現した物を表している。

 一般的な曼荼羅は大日如来を中心にして、その周囲を諸仏像で囲まれている絵画だ。