顧問と私たちと旅行部な時間

 綾海はハンバーガーを一口囓りながら、考えた。
 確かに旅行は好きだが、いまいち旅行部にいる自分の姿が想像つかなかった。


「えっと、私、運動部以外の部に入ること、考えたことないから」


 その言葉を聞いて、那歩は頬張っていた口を動かすのを一瞬止めた。
 その言葉が出ることは予想していた那歩は、待ってましたと言わんばかりの視線を綾海に向けた。


「中学の時、3年通して1つの部活にいなかったみたいね」


「いったい、どこからそんな情報を」


 綾海は半分あきれた。


「どんな部に入ってたの?」


「1年の時はテニスで、2年はバスケ、3年は陸上。どれも1年と混じって練習してたけど」


「それは、自分がいるべき部が、ここではなかったって意味で捉えて良いのかな?」


 鋭く言われ、綾海はどきっとした。
 的を射た答えではなかったが、心のどこかにかすってはいた。


 決して面白くなかったとか、辛かったからという理由ではなかった。不思議と、別の部はどんな活動なのか気になり、3年間転々としていた。
 今思うとそれも、確かな理由ではないのかもしれない。そう感じていた。