顧問と私たちと旅行部な時間

「2800円です」


「は、はい」


 カバンから財布を取り出し会計を済ますと、紙袋に入れられた本を受け取り、慌てて本屋から駆け出た。


 紙袋に入った本を胸の前に抱えたまま立ち止まり、琴子は気分を落ち着かせるために深呼吸した。


 気分を落ち着かせててから再び歩き始めたが、足を踏み出す度に抱えている本が気になって仕方がなかった。


 ――こ、これは家までこみ上げる気持ちが持ちそうにありません。


 紙袋の中身をちらっと見て、琴子はどこか読める場所がないか見回した。


 ――あそこにしよう。


 1つのお店に向かって、琴子は足早に向かった。その店内が見える窓の向こうには、那歩と綾海がいた。


 2人はトレイに乗せたハンバーガー、ポテト、コーラのセットをテーブルに置くと、向かい合うように椅子に腰掛けた。


「よく分からないけど、奢ってくれてごめんね」


 申し訳なさそうに綾海が言うと、那歩はポテトをトレイに広げながら笑顔で答えた。