顧問と私たちと旅行部な時間

「親父の土産じゃなくて、現地で食ってみてぇなぁ」


 長距離トラックの運転手である彼の父は、行った先々で名物の土産を買ってくるのだ。


 次々とページを捲っている祐樹の隣の通りでは、小柄な少女――姫島琴子がいた。

 琴子の視線の先には美術関連の小さなスペースがあった。
 美術関連のスペースの周りはビジネス関連のスペースが配置され、この通りには中年の男女が数人いるだけで、若者の姿は琴子だけだった。


 この通りの入り口に立ち、琴子の視線は通りの中央にある1冊の背表紙に定まっていた。


『立体曼荼羅の世界』


 背表紙にはそう書かれていた。


 B4サイズの比較的大きなサイズの書籍で、立派な装丁をしているのが遠くからも伺える。


 ――女子高生が曼荼羅の写真集なんて買ったら、やっぱり変ですよね……。


 琴子はジッと背表紙を見ながら心の中で呟いた。


 ――表紙をちょっとだけでも……。


 そう思いながら、ビジネス関連の本を見ながら、少しずつ立ち位置をずらし、目的の本に近寄った。