顧問と私たちと旅行部な時間

「やっぱり、あたしの視力に狂いはなかったわ」


「視力?」


 目に狂いはないと言いたかったのだろう。


 那歩は、いきなり綾海の両手を掴んだ。
 突然のことに、綾海はキョトンとして胸の前で両手を掴んでいる那歩を見た。

 那歩は発狂しそうな自分を抑えて言った。


「綾海ちゃんは、旅行が好きなんだよね?」


「えぇ、好きだけど」


「じゃぁじゃぁ、ちょっと隣のマグドでお話ししようよ!」


「えっ、えっ?」


 訳が分からないまま手を引っ張られ、綾海は強引に本屋から連れ出された。


 綾海が店から出たことも知らず、祐樹は別の雑誌を読み始めた。


「沖縄のソーキソバ、食ってみてぇなぁ」


 祐樹が見ているのはグルメ雑誌だった。食べることが好きな祐樹にとって、グルメ雑誌を見ることは、欲を満たす1つでもあった。