顧問と私たちと旅行部な時間

 鋭く一蹴し、綾海は祐樹を睨みつけながら、頭頂で束ねていたシュシュを荒っぽく外した。


「私、これで帰るから」


「おー、これでうるさいのがいなくなる」


 聞こえないフリをして、綾海は言った。


「せっかくだから一緒に帰りましょ」


「あぁ?」


「着替えてくるから、そこで待っててね」


 そう言いながら、綾海は足早にテニスコートに併設してある更衣室に向かった。
 そんな綾海の背中を見て「強引な奴だ」とため息をついた。


 そんなことを言いながらも、祐樹は綾海を待っていた。


 祐樹と綾海は家が隣同士の幼なじみということもあり、幼稚園の時からの付き合いである。
 どういうわけか、小学校、中学校、全学年で一緒のクラスだった。
 綾海は小さな時から祐樹にベッタリだったが、そんな綾海を祐樹は迷惑そうな顔はするが、邪険に扱うことはしなかった。


「お待たせ」


 制服姿に着替えた綾海は、ラケットを学生鞄に持ち替え、帰り支度はできていた。