顧問と私たちと旅行部な時間

「それらしいのはいたが……」


 手に取ったプリントの内容を見て、大きく顔を歪めた。


「こいつは……先延ばしだ」


「なになに?」


「まぁ、こいつは関係ない。おまえはそろそろ帰れ」


「送ってくれないの~?」


「たわけ! 教員というものは、見かけ以上に忙しいんだ」


 耕二は先ほどのプリントを今一度目を通し、窓から校庭を見下ろした。見下ろした先にはテニスコートがあった。


 岸和田祐樹は女子テニス部の練習を鉄網越しに見ていた。当然、部活見学という訳ではない。あくまでも欲を満たすために、眺めているだけである。


 そんなテニス部で、3年生相手にボールを華麗に打ち返している美少女――小原綾海がいた。

 Tシャツにスコートという、よく見るテニスウェアを身につけ、狭そうで広いコートを右へ左へと駆け回っていた。

 ボールが打ち返される度に、綾海の身体は素早く反応し、頭頂で縛った長い髪を激しくなびかせながら、ラケットがボールを打ち返す。