顧問と私たちと旅行部な時間

「ここは、私がいるべき部じゃないですね」


 それだけを言うと、琴子はスタスタと美術室から出て行った。
 それを、美術室に残る生徒たちと顧問は、不思議な者を見るような目で見届けていた。


 美術室から出た琴子は、大きくため息をついた。


「ただ、好きな絵を描ければ、それでいいのに……」


 伏し目がちに琴子は長い1本の廊下を歩き始めた。
 そして、第二社会科資料室の前を通り過ぎた時、その戸が開いた。
 そこから1人の少女――八坂那歩が顔を出し、美術部の方向を見た。


「今、美術部にいるのかな?」


 廊下へ身を出す那歩に、椅子に腰掛けている耕二が言った。


「まぁ、明日にでも声をかければいいさ。入部の正式な受理は届けを出して1週間後だ」

「そうなんだ」


 階段の方へ向かって歩く少女の背中一瞥して、那歩は部屋に戻った。


「ねぇ、まだ強力な人材はいたの?」


「あぁ?」


 再びプリントに手を伸ばした。