顧問と私たちと旅行部な時間

「そうでしょうか」


 まるで、期待のエース、もしくは金の卵が入部してきたような、そんな興奮を見せる先輩たちだったが、綾海は申し訳なさそうに言った。


「今日はありがとうございました。他の部も見に行きたいんで」


「あっ、そう……」


 先輩たちは、すっかり部活体験だと言うことを忘れていた。


 耕二と那歩は、そんなやりとりを校舎の3階から遠目で見ていた。


「頭脳明晰、スポーツ万能。それでいて容姿端麗だ」


 冷静に眺めていた耕二と対照的に、那歩は興奮気味だった。


「なんか、すっごいあたし好みの可愛い子だよ! それにポニテだよ、ポニテ!」


「おまえの好みは聞いちゃいない」


 那歩は大きく深呼吸して、自分を落ち着かせると、耕二を見上げた。


「来てくれるかな?」


「それは未来の部長の仕事だ」


 そう言って、那歩を見下ろした。