顧問と私たちと旅行部な時間

 小原綾海は射場に立ち、先輩たちに見守られながら胴造りを済ませ、弓を構えた。
 的に顔を向け、弓を肩より高く持ち上げ打起こすと、28メートル先の垜(あづち)に並べられた1つの的に神経を集中させ、引き分けた。

 引き分けきった状態の長い『会(かい)』は、的と弓と、精神と肉体との駆け引きだ。


 矢は鋭い音と共に、弓から離れた。


 小気味の良い音を立てて、矢は的に見事刺さった。


 驚きの声と共に拍手が響く中、綾海は残心を済ませた。


 射法八節を終えた綾海は、「ふ~」と大きな息を吐いて、重い弓を両手で持った。


「小原さん、すごいじゃない!」


 駆け寄る先輩方に、綾海は疲れた表情を見せていった。


「弓ってすごく重いんで、疲れました」


「それ、12キロの比較的軽い部類だけど、半月もすれば慣れてくるわ」


「初めてで的に当てるなんて、すごい素質よ」


「先輩方の教えが上手だからです。それでも、8本目でやっと的に当たりました」


「1本目から垜に持って行けば十分だわ」