顧問と私たちと旅行部な時間

「八坂那歩――。北海道――中尊寺。岩手――龍泉洞。和歌山――那智の滝。愛媛――道後温泉。宮崎――日南海岸。
 さすがは旅行好きということもあり、模範的な回答だな」


 それを聞いて那歩は「えへへ」と頭を掻いた。
 そんな自慢げな那歩を、耕二はビシッと指さした。


「覚えておけ、入部したらみっちり鍛えてやるからな」


 耕二は那歩のプリントを机に置き、プリントの束から分けて置かれた数枚のプリントから1枚手に取り、那歩に見せた。


「空欄はあるものの、なかなかの逸材だ」


「1組、小原綾海」


 『思いつくままに書き込め』という題目に、約7割の都道府県に観光地名や温泉名が書かれていた。


 耕二は立ち上がり、窓から校庭を見下ろした。校庭の隅ある弓道場には弓道着を着て、長い髪を頭頂で束ねた小原綾海が辛うじて見える。


「彼女のことを調べてみた。受験の成績は8位となかなかの優秀だ。
 中学時代は色んな運動部に所属していたらしく、どれもレギュラー並みのプレイをしていたようだ」


 那歩は遠目に見える綾海をじっと見た。