棗には悪いけど…
言えないんだよ…。
ゆっくりと俯いていた顔を上げて口を開く。
「棗…私の素性は今は言えない…。」
真っ直ぐ、棗の目を見る。
「今は…?じゃぁ、いつになったら話せるんだ?」
棗も、私から目を離さない。
「いつになるかは…正直、分からない。でも、いつか言うときが来るから。絶対。」
…その時は、この街に居ないけどね。
「……今じゃ…駄目なのか?」
「…今じゃ…駄目なの。」
申し訳なくなって、また顔を俯かせる。
「そうか…。でも、気になるんだ。悪いけど…稚春の事、調べさせてもらった。
そしたら…何も、出てこなかったんだ。出てきたのは、稚春の名前と歳ぐらい。
普通はもっと出てくるんだけどね…。何回やっても、ブロックされてて駄目だった。本当…稚春って何者?」