「まずいわね、あの方向。
いつもみたいに魔弓でやるかい」

 攻殻上部の魔操士席に腰を下ろしたまま、凛《りん》は言った。

「あのタイプじゃ、今までみたいに魔弓で一撃とは行かないな。
基地との中継を切るなら準備できたけど」

 魔操士席の下、丁度股の間に頭がくる位置にある開封士席から狼藍《ろうらん》が言った。

「あのまま進まれると集結場所に近すぎる。
今のうちに叩くか」

「そう言うと思った」

「よく判ってるじゃない」

「そりゃあ、訓練校の頃と変わってないしな」

「随分昔のことを言い出すわね」

「それじゃあ、ここに誘き寄せて、接近戦だね」

「了解」

 狼藍が迷彩結界を解き、凛が攻殼の大刀を動かし陽光を反射させた。

 それを確認して、狼藍はすぐに迷彩結界を張り直す。

「今ので気付くかな」

「優秀なら、今のを見落とさないはずだ」

「優秀じゃなかったら?」

「まあ、その時は、小細工無しでもいけるからね。
凛の好きなようにして」

「判った。
でも、優秀だったみたい。
こっちに向かって降下してきた」

「よし、それじゃあ、ぎりぎりまで引きつけて、一気に第三段階詠唱に入るよ」

「了解」