ボタンを付け終わり、綺麗にたたんで佐野君に渡すと、丁度先生が戻ってきた。

「奥村さん、お待たせ、送って行くから」

佐野君はバッグと私の鞄を肩に担ぐと、いきなり私を横抱きに抱えた。

「うぁっ?!佐野君!下ろして!」

「え?だって目眩がするって…」

「大丈夫だから!歩けるから!」

「…そうか?」

渋々私を下ろす佐野君。

…びっくりした。

倒れた時もこんな風に抱えてくれたのかな?
重くなかったかな?
恥ずかしい…

「……若いっていいわね…」

櫻井先生がそう呟いているのが微かに聞こえた。

「せんせーもまだ若いじゃん」

「あはは。ありがと、佐野君は奥村さんの付き添い?一緒に来るの?」

「うん。家まで送るように頼まれたから」

佐野君は荷物を抱え直すと保健室から出る。

「奥村さん、行こうか?」

「はい」

私達は教職員用の駐車場に行き、先生の車に佐野君と並んで後部座席に乗り込む。

「道わからないからナビしてね?」

言うと先生はエンジンをかけ車を出し、私は家までの道を先生に簡単に説明した。

「…俺んち、奏んちの近くなんだよ?」

「え?ホントに?」

「うん。近くにコンビニがあるだろ?」

「…うん」

「俺んち、そこの裏のアパート」

…ご近所だったんだ、佐野君と…
何で今まで会わなかったんだろう?
あのコンビニよく行くのに…

「何で今まで会わなかったんだろうな?はは」

同じ事考えてる。
ふふ。

暫く車に揺られていると、佐野君とキスした公園を通り過ぎた。

その時の事を思い出してしまって、チラリと佐野君を見れば、佐野君も私を見ていて、慌ててうつ向いた。

また同じ事考えてたのかな?
だったら嬉しいな…

「わざわざ駅前で待ち合わせする必要なかったな?近所なのにな?」

…あの時の事か。

「…うん。そうだね」

「…また日曜に行くんだけど…奏も来る?」

「…え?バスケ部の…」

「うん、でも朝早くから出るからなぁ…奏疲れさせるだけか…練習見てるだけじゃ退屈だよな…」

「そんな事ない。また行きたいって思ってたから」

「…じゃ、行く?」


どんな嘘をついてでも……


行くに決まってる。