◇◇◇


「軽い脳震盪みたいね?もう少し休んでて?まだ先生少し雑用残ってるから、後で送ってあげる」


養護教員の櫻井先生が私のおでこに手をあててニッコリと微笑んだ。

「はい」

先生が保健室から出ていくと、美樹ちゃんが私の顔を、何か言いたげにじっと見ていた。

「…何?美樹ちゃん?」

「かなちゃん、佐野君が好きなんでしょ?」

「!…えぇっ!何で知ってるの?」

いきなりの事で、誤魔化すよりも驚いた。

「…やっぱり」

私は急に心臓の音が早くなった。

「…何で…わかったの?」

「…何となく、見ててわかったの…」

「…お願い、美樹ちゃん、誰にも言わないで…」

「…佐野君にも?」

「それだけは絶対にダメ…」

「…何で?」

「…佐野君の事が…好きだから…」

「だったら…」

「…ダメなんだよ、私は佐野君との事、浮気だと思ってるから…私の気持ちが佐野君にわかれば、佐野君は私から離れてしまう…それだけは、嫌…」

「…何でそう思うの?」

「…最初に…佐野君が言ってきたの…俺と浮気しない?って…その時は…軽い気持ちでいいよって、返事したの…私…佐野君の事、こんなに好きになるなんて…思わなくて…」

美樹ちゃんに話しながら、私は涙が滲んできてしまっていた。

見てればわかるって言ったよね?
私の想いはそんなに溢れているの?

私…必死に隠してるつもりなのに、佐野君が側に居ると、それすらも出来なくなってる?

…どうしよう、絶対に秘密なのに…


「…かなちゃん…きっと佐野君も…」

「…え?」

私は頭の中が混乱してしまって、美樹ちゃんの言っている事がよく聞き取れなかった。

「…ううん、それより佑樹君。なるべく二人きりにならない方がいい…あたしの事、利用していいから…あたしもなるべく、かなちゃんの側に居るから…二人で考えよう…」

「…美樹ちゃん…」

「…かなちゃん、お父さんの事が心配なのはわかる…でもね?かなちゃんがこんな目に合ってるなんて…あたし…」

美樹ちゃんの瞳から涙が流れ落ちた。

美樹ちゃんは私をギュッと抱き締めてくれた。


「…ありがとう…美樹ちゃん」