「……うぅ〜ん…」

「あ。かなちゃん、起きた?」

…奏…起きたみたいだな。

「…いたた…あれ?ここ…保健室?」

「うん。かなちゃんボールが飛んできて、頭ぶつけて倒れたんだよ?」

「…そう言えば…そんな気が…いたた…だから頭痛いんだ…たんこぶ出来てる…」

…たんこぶ。
可哀想に…奏…

「…かなちゃん…肩…どうしたの?さっき体育館で座った時にチラッと見えたから…今確認してみたら…他にも…」

「えっ?」

「…最近…様子おかしいかったし…顔色も悪いし…もしかして佑…」

「違うよ美樹ちゃ…」

「嘘つかないで」

「…美樹ちゃん」

「あたしに出来る事があるならなんでも言ってって言ったよね?」


なんの話だ?俺にはサッパリだ…


「…奏?起きた?」

カーテンを開けて、中を見ると、奏は身体を起こしていた。

「えっ?佐野君?」

奏は少し驚いた顔をして俺の顔を見た。

「あ。佐野君…居たんだった…かなちゃん、佐野君がここまで運んでくれたんだよ?」

「…えっ?」

「もう凄いスピードで」

美樹は俺の顔をチラリと見て言った。

「…ありがとう…佐野君…」

奏は赤くなりうつ向いた。

「いいって、奏、大丈夫?吐き気とかない?」

「うん。大丈夫…たんこぶ出来てるけど…」

「…どれ?」

奏の後頭部に手を伸ばし、それに触ってみると、確かに少し腫れていた。

氷枕を頭にあてて、再び奏を横にする。

「…しばらく冷やしてて」

「…うん。ありがとう…」

「…なんか…佐野君…別人みたい…」

美樹が俺にそう言って、奏に布団をかけ直していた。

「…は?別人?」

「あたし、佐野君って、もっとこう…冷たい?みたいなタイプだと思ってたから…」

「…美樹ちゃん、そんな事ないよ、佐野君は優しい人だよ…」


…奏、そんな嬉しい事言うなよ。
ニヤケちゃうだろ?ははは。

「俺。戻るから、美樹ちゃん、あとお願い」

「うん。わかった」

「じゃ、奏。無理すんなよ?先生が車で送ってくれるみたいだから、早く帰って休め、ホントに顔色悪いぞ?」

奏の瞳を覗き込み、軽く頭を撫でた。