「……それどう言う事?」

佑樹は爽やかに笑うと、

「そんな事気にならない位、奏は俺の事が好きって事だよ」

…はっ。

そうかよ。

自信満々だな?おい。

それでも俺は簡単に諦めたりしないもんね。

今は好きじゃなくても、この先どうなるかはわからないし。

俺が一度諦めかけた夢を、違う形であれ、取り戻すキッカケをくれた奏。

それまでの俺は自分が情けなくて、惨めだっただけだけど。

まだ自分にもやれる事があるんだと気付かせてくれた奏。


時間がかかってもいい。
奏がいつか俺の事を好きになってくれれば。


「…はっ。そうですか…」

俺は開いた携帯をパチンと閉じた。

「うん。だから佐野君?奏にチョッカイ出しても無駄だよ?」

「…はは。人の彼女にチョッカイ出しといて、よく言う…」

「あれは向こうから誘ってきたの。佐野君もっと美里に優しくしてあげなよ?寂しがってたよ?」

「…好きでも無い奴に優しくなんか出来ないよ俺は…」

「………ふぅ〜ん?さっき奏には優しくしてたみたいだけど?」


こいつ、ムカつく…


「…佑樹君」

美樹が戸口に立っていた。

「…担任の先生が呼んでたよ?ここはあたしに任せて、早く行ってきなよ」

言いながら美樹はベッドに近付いてきた。

「げ、マジで?またなんの用事押し付けられるんだろ?」


佑樹は渋々ベッドから立ち上がると、

「じゃ、美樹ちゃんあとよろしくね?奏が起きたら、俺待ってるように言って?送って行くから」

「あたしが送って行くから大丈夫だよ、もうすぐ保険の先生も来るから、車出してもいいって言ってたから」

「…そっか、わかった。起きたら連絡するようにだけ言っといて」

「うん」

そう言うと佑樹は保健室から出ていった。

「…佐野君?ちょと後ろ向いてて?」

美樹は突然そんな事を言い出した。

「…は?」

「…いいから!」

美樹は俺の背中を押すと、ベッドから追い出し、カーテンを閉めた。

何なんだ?いったい…

美樹は何やら中でゴソゴソとしている様子。


「……かなちゃん…」


美樹のそう呟く小さな声が聞こえた。