声の方に目をやると、戸口に立ってこちらを見ているのは浮気ヤロー…もとい、佑樹だった。


俺は優しく奏の頭を氷枕に下ろすと、布団を奏にかけてやる。


「…いきなり抱えて走り出すんだもん、びっくりしたよ、はは」


佑樹はベッドに近付くと、それに腰掛け、奏の頭を撫でる。

間近でやられるとかなりイラつく。

「…ああ…咄嗟にね…身体が動いた…あんたもあの場に居たんだ…」

ホントは知ってたけど、知らなかったフリをする俺。

こいつとここにあまり居たくないな、あの時の事を思い出す。


「…最近、奏と仲いいみたいだね?佐野君…」

「仲いい?そりゃクラスメートだしね、お隣さんだし…」

「…名前で呼んでるし…」

「俺。基本女の子はみんな名前で呼ぶよ?」


佑樹は奏の頭から頬に手を移した。

さらにイラつく。


こいつ絶対わざとやってやがる。


俺は佑樹の手を掴み、奏から引き離した。


「…頭…ぶつけてるみたいだから…あんまりさわるなよ、それに顔色悪いだろ?寝せといてやれば?寝不足なんじゃね?」


「…随分心配してるんだな?」

「は?当たり前だろ?目の前で倒れりゃ誰でも心配するさ」

「…わかってると思うけど、奏は俺の彼女だよ?」

「何当たり前の事言ってんの?そんな事知ってる…」

「だったら奏に馴れ馴れしくするなよ」

急に低い声になる佑樹。

「別に普通にしてるだけだけどね?」

「お前、彼女居るだろ?」

『佐野君』から『お前』になっちゃったよ、おい。ははは。

「…美里の事か?あんな浮気女、もう彼女じゃねぇし」

すると佑樹はピクリと反応して俺の顔を見上げた。

俺は携帯を取り出し、写メの画像を出して佑樹に見せた。

「…………」

佑樹はそれをじっと見つめた。

「…奏に見せようか?」

ホントはもう見せてるんだけどね?

すると佑樹は笑ってこう言った。

「はは。見せれば?」

「…は?」

意外な反応に俺は少し驚いた。

「別に見せてもいいよ?」

「…お前、ホントに見せるぞ?」

「うん。いいよ?そんな事位で奏は俺から離れたりしないから」