佑樹は私に気付き、笑顔で近付いてきた。
身体が強ばる私。
「…あれ?奏もバスケ?」
「……うん」
思わず肩を押さえる。
「…昨日はごめんな?」
佑樹は私の頭を優しく撫でた。
「ホントに二人は仲がいいね?」
沢田さんが私達を見てそう言うと、
「うん。大事な彼女だしね?」
「…うわー。のろけ?ごちそうさま。あはは。だったらバスケ手抜きしてよね?あたし達優勝狙うんだから」
「優勝は俺達だよ?」
「何それ?凄い自信、まあ佑樹君も中学ん時、バスケやってたしね?でもうちには佐野君と言う最終兵器が…」
「佐野?」
「うん。佐野君。彼もバスケやってたんだって。凄い上手だったよ?」
「……ふーん」
そう言いながら佑樹はコートの中の佐野君を目で追っていた。
佑樹も確かに中学の時はバスケをやっていたけど、それはただの部活動で、佐野君みたいに凄い選手とかじゃない。
沢田さんと佑樹は同中で、会えば今のように時々話したりしている。
「…じゃ。最終兵器佐野君に負けないように、練習するか?奏?今日もうちに来るだろ?」
…行きたくない。
「……うん」
私がそう言うと、佑樹は自分のクラスのチームへと走っていった。
「…かなちゃん!」
美樹ちゃんが私の所に走ってきた。
「…大丈夫?なんか言われなかった?」
あれから美樹ちゃんは、私が佑樹と二人で話してたりするのを見かけると、こうやって急いで来てくれるようになっていた。
また私が佑樹に、何かされているのではないかと、心配してくれている。
私に他に好きな人が居る事。
佑樹とは別れられない事。
佑樹の言いなりするしかないと言う事…
美樹ちゃんはそれを知っている。
でも私に以前と変わらず接してくれている。
優しい美樹ちゃん。
「…ううん。別に何もないよ?美樹ちゃんもバスケだったんだ?」
…ホントは昨日…佑樹にベッドに突き飛ばされて、上の棚の部分に右肩をぶつけてしまい、アザが出来ていた。
最近の佑樹は少しでも機嫌を損ねると、私に対して急に暴力的になる事がたまにある。
今の私の身体には見えないアザがあちこちにある。
また、人には言えない秘密が出来た…

