「肩に力を入れないで、真っ直ぐリングだけ見て、そして投げるんじゃなくて軽く届ける感じね…そう!ナイシュー!やるじゃん沢田」
佐野君は沢田さんの肩をポンと叩くと、沢田さんは少し照れたように頭をかく。
翌日の放課後。
私達のクラスのバスケチームは、一番乗りで体育館に来て練習を始めていた。
「佐野君バスケやってたの?」
沢田さんが言うと佐野君は、
「…中学ん時ね…バスケ部だったから…」
そう言うと、片手でボールを拾い、ヒョイとボールを上げると、ボールは音も経てずにリング吸い込まれていった。
やっぱり佐野君は凄い。
他のクラスメートもそれを見て茫然としている様子。
「…佐野君、凄い…これなら優勝狙えるかも?ね?みんな?」
沢田さんかそう言うとみんなも、うんうん、と頷く。
「あはは。んな事ないない、さ、軽く練習しようぜ?」
佐野君は他の男子達と練習を始めた。
私達女子も同じく軽くドリブルから始める。
「佐野君ってさ」
沢田さんが私にそう言ってきて。
「…佐野君が何?」
「あたし、チャラそうで感じ悪いって思ってたんだけど、話してみると意外にいい人なんだね?」
「うん。いい人だよ?」
「最近よく奥村さんと話してるよね?」
ドキリとした。
「…うん。席隣だし、勉強とか、たまに聞いてくるんだよ…」
…たまにノートで会話してるんだけど。
「あはは。佐野君ってば、だから他の男子から羨ましがられてるんだね」
「?…何で羨ましがられるの?」
「だって奥村さんだよ?」
「うん。私だよ?」
「学年1の美少女と誉れ高い、その奥村さんに臆する事なく、話し掛けるなんて、なかなか出来ないよ、あはは」
「…えぇっ?!」
私はびっくりして大きな声が出てしまった。
「あら?無自覚?奥村さんってもしかして天然?あはは。それに、あの生徒会長で優等生の横田佑樹君の彼女だしね…おそれ多くて近寄れ無いんだよ」
私ってそんなふうに見られてたんだ…
…知らなかった。
そんなやり取りをしているうちに、他のクラスの生徒達が続々と体育館に入ってきた。
…その中に佑樹の姿を見つけた。

