「佐野君…とりあえず、くじ引きに来て」


竹田君が遠慮がちに佐野君に言うと、佐野君はキョトンとして、私に聞いてきた。


「…くじ引き?」

「来週の球技大会のくじ引きだよ?」

「…球技大会…」


言うと佐野君は立ち上がり、前に出てくじ引いてそれを開くと、黒板に男子バスケットと書かれている下に、『佐野』と書いた。


…佐野君…
…バスケって…膝は…


聞きたかったんだけれども、私の順番が回ってきて、立ち上がり、くじを引きにいく。


開いてみると『バスケ』と書かれていて、黒板に自分の名前を書いて席に戻り、佐野君にこっそりと聞いてみた。


「佐野君、バスケって…大丈夫?膝…」

「ん?ああ、大丈夫、大丈夫。たかが球技大会だろ?楽勝、ははは。去年はソフトボールだったんだよな、俺。奏もバスケかあ…」

「…ホントに大丈夫?」

「大丈夫だって」

笑う佐野君。

…心配だけど、佐野君がそう言ってるなら大丈夫なんだよね?

とりあえず胸を撫で下ろす。

「…最近さ、あいつらの練習見てやってるんだ…」

「あいつらって、リョータ君達?」

「うん。そう、このところ毎週…」

だからあんな夢見てたんだ…

「地区大会優勝して、今度は県大会だ…」

「え?凄い」

「別に凄くないよ、これからが本番」


くじ引きも終わり、ざわめく教室で、竹田君が声を出した。


「決まったみたいだから、各チームで放課後にでも話し合って下さい。何度か練習必要なら早めに言って下さいね?以上で終わります」


それから担任のが少しだけ話をして、今日の授業が終わり、各チームごとにそれぞれ自然と集まった。


私と佐野君の座る席に何人かの男女のクラスメートが集まってきた。


「バスケチーム?」

佐野君が聞くと、

「うん。そうだよ、練習どうする?」

女の子が私に聞いてきた、彼女は沢田さん。

「練習かぁ…どうする?佐野君?」

私は自然と佐野君に話をふった。

「…俺、明日なら時間あるけど?みんなはどうだ?」

「…明日練習しようか?」

私が言うと、みんなは頷き、

「よし。決まり、明日少し練習しよ」

佐野君は笑顔でそう言った。