ただひとつ、私の好きな人が佐野君であると言う事以外、私は美樹ちゃんにこれまでの出来事を全て話した。

呆れられるかもしれない。
軽蔑されるかもしれない。
嫌われるかもしれない。

私はそんな事を考えてしまって、美樹ちゃんの顔を見る事が出来ずに、終始うつ向いたままで話した。

その間、美樹ちゃんはずっと黙って聞いていた。

私が話し終えると、美樹ちゃんは大きく息を吐いた。

「……そんな事が…」

その声からは美樹ちゃんが今、どんな表情をしているのか読み取る事が出来ず、私は恐る恐る顔を上げた。

すると、美樹ちゃんが私の背中に手を回し、私の身体をギュッと抱きしめた。

「…かなちゃん…辛かったね…あたし、何も知らなくて…」

「…美樹ちゃん、呆れた?私の事…軽蔑する?」

私も美樹ちゃんの背中に手を回した。

「…そんな事…ある訳ないじゃない…あたしの方こそ、親友だって思ってたのに、何にも知らなくて…かなちゃんがそんなに辛い思いしてたなんて…」

「…美樹ちゃん…」


ありがとう。美樹ちゃん。
私の事心配してくれて…

親友だって言ってくれて…


−ガラッ…


図書室の扉が開き、私達は抱き合ったまま扉の方に目をやると、そこには美樹ちゃんの彼氏の拓也君が立っていた。


「…何やってんの?」


拓也君は扉に手をかけたまま私達を見つめていた。

すると美樹ちゃんが、

「…う…浮気?」

と言った。

「…は?」

拓也君はキョトンとした顔になり、私はそれがおかしくて、思わず笑ってしまった。

「あはは。拓也君?ごめんね?私、美樹ちゃんの事大好きなんだ」

私は美樹ちゃんをギュッと抱きしめた。

美樹ちゃんは私の頬に顔を刷り寄せてきた。

腫れてる頬を隠すように。

「…え?マジで?」

拓也君は思いきり動揺している様子。

「マジマジ。だから今日から拓也とはサヨナラだね?」

「…そんなぁ…」

「あはは。嘘だよ?拓也、びっくりした?」

美樹ちゃんが私から離れると、私はマスクを付けた。

「…びっくりした、てか、萌えた?も一回抱き合って?写メるから」

「…あんたバカ?」