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佐野君と佑樹が居なくなるまで、私は暗幕の中で小さく震えていた。


…びっくりした。


佐野君が咄嗟に隠してくれたから助かったけど。


もしあんな所を佑樹に見られたりしたらと思うとゾッとした。


昨夜の佑樹の事を思い出し、私は涙が滲んできてしまう位、ホントに見つからなくてよかったと思った。


無理矢理抱かれたあの後は、いつも通り優しく微笑んで私に謝ってきたけけど、なんか…目が笑ってないと言うか…


他の男と遊んだ罰だって言ってた。


待たされると不機嫌になるのは前からだったけど…

他の男の人と遊んだと思っただけで、あれだけ怒るなんて…


…物凄く…痛かった…


無理矢理抱かれる事が、あんなにまで苦痛だなんて…

昨晩の恐怖が再び襲ってきて、胸がドクドクといってきて、呼吸が荒くなってくる。


それよりも、もっと恐い事は…


佐野君との秘密の関係が終わってしまうんじゃないかと言う事。


もしこの事が佑樹にバレてしまったりしたら…


佐野君と会えなくなる…


浮気でもいいから、佐野君に抱き締めて欲しい…

優しく笑いかけて欲しい。

…キスして欲しい…


……佐野君。


あなたの事が好きになってしまった私の想いは、心の奥底に閉じ込めてはいるんだけど…


佐野君の顔を見ただけで、時々溢れだしそうになる…


佐野君にとって、私のこの想いは全然関係無い事かもしれないけど…


でも、少しは佐野君も私の事好きだよね?

だから、私の事心配してくれたりするんだよね?

優しくしてくれるんだよね?


だから…絶対佑樹には秘密にするから…

少しでも長く佐野君の側に居たいから…



しばらく経ってから私は暗幕から出て、鍵を開け視聴覚室から出た。


教室へと向かう廊下の途中で、窓の外を見ると、佑樹と佐野君が渡り廊下を歩いていて、私は佐野君の背中をじっと見つめた。


不意に佐野君が私の居る廊下の窓に顔を向けた。


私に気付き、笑顔になる佐野君。

想いが溢れてくる…

絶対に秘密だけど…


佐野君。
あなたが好きです。